機動戦士ガンダム第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」で死んだ人数をカウントしてみた(死者メーター48)
人は物語の中でいとも簡単に人を殺し、それを読んだり鑑たりして、喜怒哀楽の感情を激しく発露させる。
古今東西、物語の中ではいったいどれだけの人々が殺されてきたのか。これは、その数をカウントし、名も無き死者に哀悼の念を捧げるためのブログである。その名も「死者メーター」。
今回は『機動戦士ガンダム第42話:宇宙要塞ア・バオア・クー』を取り上げ、その死者数のカウントを試みる。
第1話はこちら ↓
死者メーター1:機動戦士ガンダム第1話『ガンダム、大地に立つ』 - 死者メーター
目次
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【あらすじ】
超大型コロニーレーザーのソーラ・レイが火を噴き、地球連邦軍は主力艦隊の大部分を失ってしまう。大打撃を被ったものの、ホワイトベースを中心にまとまった連邦軍の残存戦力は当初の予定どおり、ジオン軍の最終防衛拠点である宇宙要塞ア・バオア・クーに攻め入る。雌雄を決する最終決戦の火ぶたがついに切って落とされた──。
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【ストーリーの流れ前半部(ネタバレ注意)】
この回では、とにかく人が死にまくる。ひたすら死にまくる。全編を死が覆っている。
「ゲルドルバ照準」で発射されたソーラ・レイが、地球連邦軍のレビル将軍率いる主力艦隊を直撃した。最初の描写で、レビル将軍が座乗するマゼラン、ジオンのデギン公王が座乗するグレート・デギン、そして(おそらく)サラミス2隻が沈む。
画面が切り替わった次の描写で、36隻もの戦艦がソーラ・レイの光の帯に包まれて消滅する。これらの戦艦は、すべてサラミスと仮定しておく。つまり死者は7200名だ。さらに、ジム1機、ボール1機、兵士1人が吹き飛ばされる描写が続く。
続けて、(推定で)65隻のサラミスが光の帯に飲み込まれる。死者は合わせて1万3000名だ。もしかすると70隻くらい沈んでいるかもしれないが、もはやどうでもいい。次に、サラミスが光の帯の圧力により折れ曲がって大破する。さらに、(おそらく)計7隻のサラミスが溶けていく。ソーラ・レイの強烈な閃光は、離れたところを航行していたホワイトベースからも観測された。
ソーラ・レイ使用の急報は、ア・バオア・クーに向かって航行中のキシリアのもとにももたらされた。グワジンのオペレータは、デギン公王が座乗するグレート・デギンの識別信号がゲルドルバで確認されていた旨をキシリアに伝え、キシリアは「なぜグレート・デギンがそこに?」と訝る。
一方、ソーラ・レイの直撃を受け、レビル将軍座乗艦をはじめ主だった艦を失った連邦軍は、無傷だったホワイトベースを起点に再集結を試みていた。このとき、半分に欠けたものの自力航行しているサラミスの姿が映っている。定員200名の半分、100名を死者としてカウントしたい。
集結した連邦軍艦隊は、激しく傷つき戦力大幅減の憂き目を見ながらも、当初の予定どり、ジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーへ攻めかかった。アムロ以下、ホワイトベースのパイロットたちも順次出撃する。
そしていよいよ、地球連邦軍とジオン軍の最終決戦が始まった。最終決戦に相応しく、双方、ありったけの物量を投入して戦いに臨んでいる様子が描写されている。
最初に、ジオン軍のガトル戦闘爆撃機が撃墜されている。さらに、ア・バオア・クーからの砲撃により、連邦軍のミサイル突撃艇3機が殲滅させられている。追加で、連邦軍のミサイル突撃艇2機が撃墜される。
ギレン・ザビが指揮を執るア・バオア・クーに、キシリアが座乗するグワジンが到着した。キシリアは、シャアを伴ってすぐにグワジンを下船する。ギレンがいる指令室へ向かう途中、キシリアはシャアに、新型モビルアーマー「ジオング」の存在を告げ、そのジオングで出撃せよと命令する。キシリアによると、ジオングは80%しか完成していないという。
再び宙域での戦闘が描写される。ジオン軍のガトル戦闘爆撃機が1機撃墜され、追加で、ガトル戦闘爆撃機がジムのスプレーガンで屠られる。ア・バオア・クーの宙域は地球連邦軍およびジオン軍の艦艇が繰り出す弾幕で充満しており、集中砲火を浴びて、マゼラン1隻が沈んだ。
キシリアは、ギレンが指揮を執っている指令室に到着。ギレン打倒を目論んでいるキシリアは、父デギンが座乗していたグレート・デギンが沈んだことを知っていながら、あえてギレンに「父の船はどこに配置されているのか」とギレンに質す。ここで初めてギレンは「沈んだ(父デギンは死んだ)」と打ち明ける。ギレンが故意にグレート・デギンを沈めたことを確認したキシリアは、目の奥に殺意を湛えた。
戦場では、戦いが続く。ジオン軍は、空母ドロスを前面に押し立てて連邦軍を迎え撃つ。ドロスから、大量のモビルスーツが発進。連邦軍のボールとジオン軍のリックドムが正面衝突し、2機が宇宙の闇に消えた。また、ジム、リックドム、ボール、ザクの順で、撃墜が描写される。
さらに、ザクがボールを蹴り上げると、吹っ飛んだボールがジムに激突して両機が大破。次に、ガトル戦闘爆撃機が2機、サラミス1隻が沈む。話もここまで至ると、特にストーリー上で何かを起こすことが難しくなるのか、死の描写が続く。ギレンの作成が功を奏し、サラミス1隻、ボール1機、マゼラン1隻、サラミス2隻が次々に沈み、連邦軍の戦力はしだいにすり減っていく。」
──ここでようやく前半部が終了。ここまでの死者を合計すると、なんと2万4024名である。前半部だけで、これまでの最多記録を更新してしまった。最終決戦に相応しい大激戦である。
【ストーリーの流れ後半部(ネタバレ注意)】
さて、話に戻ろう。
新型モビルアーマー「ジオング」に案内されたシャアは、ジオングに足が装着されていないことに気づいた。工兵に尋ねると、「性能は100%出せる。足なんて、ただの飾り。偉い人にはそれがわからない」と、愚痴っぽい答えが返ってきた。シャアは、ジオングに乗り込む。
再び宙域の描写である。サラミスとグワジンが正面衝突して、2隻が沈む。さらに、サラミス、ムサイ、サラミス、ボール1機が宇宙の塵となる。作中のギレンの弁から察するに、ここまではジオン軍が戦いを優勢に進めているようだ。
ジオン軍の巨大空母ドロスに接近したサラミス2隻が、相次いで沈む。ドロスの奮戦に、まるで我が子の活躍に目を細める親のような表情を見せるギレン。ギレンが新たな指示を出そうとしたその瞬間、指令室内にいたキシリアが叫び、新たな敵艦隊の出現を伝える。
キシリアは、シャアのジオングに第34モビルスーツ隊を率いさせ、ジオン軍が「Sフィールド」と名付けたア・バオア・クーのエリアに向かわせた。連邦軍の戦力が残り少ないことを見て取り、勝利を半ば確信したキシリアは、打倒ギレンの陰謀を果たすべく、行動を起こす決心をする。キシリアは、銃を手にかけた。
ジオングは、かつてガンダムに撃破されたモビルアーマー「ブラウ・ブロ」のように、一部にサイコミュを取り入れたオールレンジ攻撃システムを備えていた。出撃したシャアは、自らに、ジオングを使いこなせるだけのニュータイプの能力があるのか不安を覚える。
キシリアが伝えた「新たな敵艦隊」とは、ホワイトベースを中心にまとまった艦隊だった。最初の攻防で、サラミス1隻が沈められる。次に、ジオングのメガ粒子砲が火を噴き、マゼラン1隻が沈む。その残骸が衝突するかたちで、サラミス1隻が破壊される。攻撃の戦果にほくそ笑むシャアだったが、ガンダムの姿が見えないことに、一抹の不安を覚えていた。
そこへガンダムが登場、ジオングと戦いを繰り広げる。ジオングのオールレンジ攻撃をことごとくかわしたアムロだったが、目前の敵が強敵であり、シャア以上のニュータイプだと推察した。しかしアムロは、「いま倒すべきはシャアではない」とジオングに背を向け、ア・バオア・クーへ向かう。
ア・バオア・クーの指令室では、ギレンが、友軍の戦いぶりに目を細めていた。その背後に、銃を手にしたキシリアが忍び寄っていた。「父殺し」という、ギレンを片付ける絶好の口実を手にしたキシリアは、銃でギレンの頭を撃ち抜く。ギレン・ザビ死す。ギレンの亡骸が指令室内を漂い、将兵らに動揺が走るが、「死体を片付けろ。私が指揮を執る」というキシリアの一喝で、指令室は再び冷静さを取り戻す。
ギレンの死に呼応するかのように、それまで連邦軍の攻撃を受け止めていた空母ドロスが沈む。ドロスの乗員数は不明だが、全長がムサイの2倍、全幅が同3,5倍あることから、2+3,5、すなわちムサイの5,5倍の乗員数としたい。1100名ということになる。
この後、ア・バオア・クーの指揮を執り始めたキシリアがSフィールドの様子を尋ねると、オペレータが「25隻中、10隻を沈めた」と返答している。シャアらが沈めた3隻以外に、7隻(おそらくサラミス)が沈んだことが確定したため、死者としてカウントしておこう。
報告を聞いたキシリアは、シャアのジオングを前面に押し立てる指示を下す。その直後、ア・バオア・クーにサラミス1隻が激突して、塵と消えた。キシリアの指揮官としての能力はギレンに劣るようで、徐々にア・バオア・クーは旗色が悪くなっていく。アムロとともに出撃していたカイ、ハヤトも奮戦、カイはザク2機、ハヤトはリックドム2機を撃滅する。さらに、セイラが新型のゲルググ1機を仕留めている。
ホワイトベースでは、ブライトとミライが情勢について見解を述べ合う。2人ともア・バオア・クーの防御力が一時的に弱体化したことを感じ取っており、ジオン軍内で何かしら不協和音が広がっている旨を推測した。
この後、ピンチに陥ったセイラをアムロが援護、リックドムとザクを撃ち落とした。さらにアムロは、左手に持たせたガンダムのバズーカを連射して、ムサイ1隻を沈める(ちなみに、右手にはビームライフルを持っている)。ジオン軍の反撃により、ジム1機が撃墜された。
その頃、ガンダムを見失って焦るシャアのジオングが、周辺宙域を飛行していた。ア・バオア・クーに取りつこうとしていたジム1機が、流れ弾で撃滅。リックドム1機も流れ弾により破壊された。
この後、無数のジムとボールがア・バオア・クーの「Nフィールド」と呼ばれる領域に取りつくが、ボール1機が迎撃にあって撃ち落とされている。Nフィールドに敵モビルスーツ隊が取りついたという報告を受けたキシリアは気がかりな表情を浮かべ、Sフィールドおよびジオングの動向について尋ねる。オペレータは、ガンダムが血路を開きつつある、と伝え、ジオングは敵に阻まれ、なかなかガンダムに近づけない旨を報告する。それを聞いたキシリアは、ジオングの操作に不慣れなシャアに同情と理解を示す。
報告のとおり、ガンダムが血路を開いたことによって、Sフィールドにもモビルスーツ隊が取りついた。一息ついたアムロだったが、ジオングが接近していることに気づいた。そしてアムロは、ジオングがこちら(ガンダム)の存在を見い出したことを覚る。
一方、ガンダムを見失った焦りがそうさせたのか、シャアのニュータイプ能力が飛躍的に拡大、シャアはガンダムの存在を知覚し、強大な力を得たことに満足げな表情を浮かべつつ、「私にも視える」とつぶやいた。
ア・バオア・クーの指令室では、キシリアが「ゲルググとドムの戦果が上がっていない」と部下を詰問。部下の返答により、ジオンでは学生がパイロットとして動員されていることが判明する。
ジオングと対決することを決心したアムロは、ジオングに向かって突撃する。その進路を邪魔する1機のザクの身体をシールドで受け止めると、そこに向かって放たれたジオングのメガ粒子砲が直撃し、学生と思われるパイロットの「母さん!」とという叫び声とともに、ザクは宇宙の塵に帰す。
ガンダムとジオングの激しい戦いが始まる。いつものように、アムロはジオングの攻撃をすべてかわす。一方、ジオングは軽く被弾。シャアは、ニュータイプ用に開発されたジオングの能力をフルに発揮できない自分の無力さに憤りと焦り、そしてガンダムに討ち果たされるかもしれないという恐怖を感じ始めるようになった。しかしシャアは「自分だってニュータイプのはずだ」と気力を奮い起こし、ガンダムに向かって突進する。
というところで、第42話が終了。
今話では、レビル将軍、デギン公王、ギレン総帥という、地球連邦軍・ジオン軍の超大物3名が戦死している。通常、戦闘では前線の名もなき兵士たちばかりが死ぬものだが、この3名を生き残らせてしまうと、(続編も含めた)ストーリーの展開上、後々ややこしいことになりそうと判断し、ご退場願ったと推察される。
今回の死者は以下だ。
見方は、死者──殺害者/殺害方法 である。
【確定死者数(前半部)】
グワジン級巡洋艦グレート・デギン乗員400名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
サラミス級軽巡洋艦36隻乗員計7200名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
ジム搭乗員1名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
ボール搭乗員1名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
サラミス級軽巡洋艦計65隻乗員計1万3000名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
サラミス級軽巡洋艦乗員200名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイで折れ曲がる
サラミス級軽巡洋艦7隻乗員計1400名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
サラミス級軽巡洋艦乗員100名──ギレン・ザビ/ソーラ・レイ
ガトル戦闘爆撃機搭乗員1名──不明/連邦軍のミサイル突撃艇のミサイル
連邦軍のミサイル突撃艇3機乗員計3名──不明/ア・バオア・クーからの攻撃
連邦軍のミサイル突撃艇搭乗員1名──不明/ア・バオア・クーからの攻撃
連邦軍のミサイル突撃艇搭乗員1名──不明/ア・バオア・クーからの攻撃
ガトル戦闘爆撃機搭乗員1名──不明/ミサイル
リックドム搭乗員1名──不明/ボールと正面衝突
ボール搭乗員1名──不明/リックドムと正面衝突
ジム搭乗員1名──不明/流れ弾
リックドム搭乗員1名──不明/流れ弾
ボール搭乗員1名──不明/流れ弾
ザク搭乗員1名──不明/流れ弾
ジム搭乗員1名──不明/ザクに蹴り飛ばされたボールが激突
ボール搭乗員1名──不明/ザクに蹴り飛ばされてジムに衝突
ガトル戦闘爆撃機搭乗員1名──不明/ミサイル
ガトル戦闘爆撃機搭乗員1名──不明/ビーム
ボール搭乗員1名──不明/ガトル戦闘爆撃機からの攻撃
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後半部に続く
【確定死者数(後半部)】
ムサイ級軽巡洋艦乗員200名──不明/さまざまな攻撃により
ボール搭乗員1名──不明/流れ弾
マゼラン級巡洋艦乗員300名──シャア・アズナブル/沈め、の掛け声とともにジオングのメガ粒子砲
サラミス級巡洋艦乗員200名──シャア・アズナブル/上記攻撃で沈んだマゼランが激突
マゼラン級巡洋艦乗員300名──不明/巨大なミサイル(ザンジバルのJミサイル?)が直撃
ドロス級超大型宇宙空母乗員1100名──不明/さまざまな攻撃により
サラミス級巡洋艦乗員200名──不明/ア・バオア・クーに激突
ザク2機搭乗員計2名──カイ・シデン/ガンキャノンのビームキャノン
ザク搭乗員1名──不明/ビーム
リックドム2機搭乗員計2名──ハヤト・コバヤシ/ガンダンクのビーム
新型ゲルググ搭乗員1名──セイラ・マス/Gファイターのビーム
ムサイ級軽巡洋艦乗員200名──アムロ・レイ/ガンダムのバズーカ
ジム搭乗員1名──不明/流れ弾
ジム搭乗員1名──不明/流れ弾
リックドム搭乗員1名──不明/流れ弾
ボール搭乗員1名──不明/ア・バオア・クーからの迎撃
「母さん!」と叫んだザク搭乗員1名──シャア・アズナブル/ガンダムを狙ったジオングのメガ粒子砲が直撃
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【計2万9739名】
この物語を成立させるために、今日も多くの人が殺された。