死者メーター

物語の中で死んだ人々の数をカウントしていく、ただそれだけのゆるいブログです

映画「天空の城ラピュタ」で死んだ人数をカウントしてみた(死者メーター52)

 

人は物語の中でいとも簡単に人を殺し、それを読んだり鑑たりして、喜怒哀楽の感情を激しく発露させる。

 

古今東西、物語の中ではいったいどれだけの人々が殺されてきたのか。これは、その数をカウントし、死者に哀悼の念を捧げるためのブログである。その名も「死者メーター」。

 

今回は、スタジオジブリの名作『天空の城ラピュタ』を取り上げ、その死者数のカウントを試みる。さっそく見ていきたいが、この作品で(正式に)死の描写が出てくるのは、物語の中盤以降である(死んでもおかしくない出来事は序盤から無数に発生するけどね)。

 

目次

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

【あらすじ】

ある夜、炭鉱で働く少年パズーは、淡い光に包まれて上空から舞い降りてくる少女シータと出会った。シータが祖母から受け継いだ『飛行石』と呼ばれる青い石は、持ち主を宙に浮かべる不思議な力を持っていたのだ。その石を手に入れるべく、政府の特務機関と海賊が暗躍する。騒動に巻き込まれたパズーは、シータが、天空に浮かぶ城塞ラピュタでかつて全地上を支配したラピュタ帝国の王族の末裔であることを知る。ラピュタをめぐる大冒険の幕が切って落とされた──。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

【ストーリーの流れ①(ネタバレ注意)】──舞い降りた少女

少女シータは、ムスカ大佐率いる特務機関の男たちに身柄を拘束され、巨大飛行客船で移送されていた。彼らは、シータが祖母から受け継いだ「飛行石」と呼ばれる謎の青い石が秘める巨大な力に興味を持っていた。ところが飛行石を狙っていたのは、ムスカだけではなかった。

飛行石を奪うため、海賊として世界にその名を轟かせていたドーラ一家が飛行客船を急襲、ムスカらと戦闘を繰り広げる。シータは、隙を見て窓から船外へ出て、飛行船の外壁伝いに隣の部屋へ移動を試みるも、足を滑らせて飛行船から落下。夜の闇に消えていった。

りからいず 天空の城ラピュタ シータ

りからいず 天空の城ラピュタ シータ

  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

鉱山で働く機械工の少年パズーは、久々の残業に精を出していた。夕食の買い出しを終え、鉱山に戻る道すがら、上空から光り輝く何かが舞い降りてくるのに気づく。よく見れば、それは少女だった。走り出すパズー。驚いたことに、少女は不思議な光に包まれ、ゆっくりと下降してくる。パズーは両腕を伸ばして少女を受け止める。彼女を助けたのは、青い石(飛行石)が持つ不思議な力だった。少女は気を失っていた。その夜、パズーは少女を自宅に泊めた。

翌日の早朝、シータは、トランペットの音で目覚める。ベッドから起き出し、梯子を上って屋根に出ると、パズーが鳩に餌を与えていた。お互いに名乗り合うパズーとシータ。パズーは、「ラピュタ」と呼ばれる、空に浮かぶ伝説の城を発見したいと願っており、その探索に使用するために自作している製作中の飛行機をシータに紹介する。

 

ここで、描写そのものはないが、人が死ぬ。パズーの話の中で、かつてラピュタ探索に出かけ、雲の隙間からその威容の撮影に成功した父親が、帰還後に世間から詐欺師扱いされた挙句、死んだことが伝えられる。加えて、部屋の壁にパズーの母親の遺影が掲げられている。両名を死者としてカウントしたい。

                                                                                      

なぜこの2名が死んだことにされたか(特に母親)と言えば、もし両親が健在だとしたら、パズーはその後の大冒険に出かけることができなくなってしまうからだ(当然、親は反対する)。そこまで考慮したうえでの、母親の遺影登場と思われる。

 

さて、パズーとシータが話をしていると、家の前に1台のオートモービルが停まった。オートモービルから顔を出したのは、飛行船を襲ったドーラ一家の長・ドーラだった。シータは、ドーラ一家が自分を狙っているとパズーに告げる。パズーはシータを男子姿に変装させ、勢いよく家を飛び出す。玄関の前でドーラの手下に尋問されるが、うまく切り抜ける。パズーは、職場の上司である親方ダッフィーの助力を請うため、町へ向かって走り出した。

 

ドーラの手下はパズーの家に勝手に上がり込み、中を捜索。そこで、先ほどまでシータが着ていた女の子の服を見つける。一杯食わされたことを覚った手下はすぐにドーラの息子ルイに連絡、ドーラの息子たちはパズーとシータを追って走り出した。

 

【ストーリーの流れ②(ネタバレ注意)】──逃避行

親方ダッフィーの家には、ドーラの長男シャルルらが聞き込みに来ていた。ちょうどそこへパズーとシータが到着。そのときシータが被っていた帽子が脱げてしまい、隠していたおさげ髪が露わになる。シャルルは、目の前にいる女の子こそが、自分たちが探していた人物だと知って、捕えようとした。

 

立ちはだかったのは、親方ダッフィーだ。ダッフィーを筆頭とする街の人々とドーラ一家の間で激しい乱闘が行なわれている隙に、パズーとシータはダッフィー宅の裏口から逃げることに成功する。しかしその行動は、すべてドーラに読まれていた。

 

ドーラは、ケンカに没頭する息子たちと合流するため、オートモービルで街中へ。シャルルらを拾うと、すぐに発進する。ここで、死人が出ても不思議ではない出来事が起こる。町中の人々がドーラ一家を追いかけ始めるが、ドーラが彼らに向かって手りゅう弾を投げつけるのだ。人々は慌てふためいて後退、手りゅう弾は爆発したが、幸いにして犠牲者は出なかったようである。加えて、民家の2階から投げつけられた植木鉢がシャルルの頭を直撃。現実世界なら死んでもおかしくないというか確実に死ぬが、シャルルは無事生き残っている。

ダッフィー宅の裏から逃げたパズーとシータは汽車道に向かい、ちょうど走ってきたトロッコ機関車に乗り込む。ドーラ一家の追跡から逃れたと安心したのも束の間、ドーラはオートモービルで汽車道へ。線路の上をオートモービルで追いかけてきた。

 

ドーラに追いつかれ、シャルルとルイの兄弟がトロッコに乗り込みパズーらの間近まで迫ってきたが、シータがスコップを投げつけて撃退する(顔面を直撃したため、2人は死んでもおかしくなかったが)。最終的に、パズーがトロッコ車両をの機関部を切り離したうえでその車輪をロックしたことにより、トロッコ車両がオートモービルを通せんぼする形となり、パズーらは逃げ切りに成功した(かと思われた)。

 

ところが、パズーらの前に軍用列車が立ちはだかる。軍用列車から降りてきた黒服の男を見るや否や、シータは駆け出し、汽車道の支線を走って逃げ始めた。追いかけるパズー。そこへ、ドーラらのオートモービルが迫ってきた。

 

軍用列車は、ドーラら目がけて大砲を放つ。砲弾が線路を直撃し、その爆風でドーラ一行は死んでもおかしくなかったが、無事に生き残っている。線路を破壊しながら走り、前を行くパズーとシータのすぐ後ろに迫るオートモービル。あわや、というところで、パズーはシータの身体を抱えて脇に飛び降り、片手で木組みの汽車道につかまる。2人分の体重を片腕で支え続けることは難しく、パズーはすぐに力尽き、シータとともに廃坑に落下してしまうが、「飛行石」が再び不思議な力を発現させ、ドーラ一家および軍人らが見守る中、2人はゆっくりとしたスピードで、フワフワと廃坑の底へ降りていった。

 

2人が降り立ったのは、はるか昔に放棄された古い坑道だった。ランプの灯を頼りに出口を探すパズーとシータは、坑道で暮らす風変りな老人「ポム爺さん」に出会う。ポム爺さんは、パズーとシータに対し、シータが持っている飛行石は、空に浮かぶ天空の城にかつて住んでいた「ラピュタ人」によって作り出された結晶であることを伝える。ラピュタ人は、巨大な飛行石の結晶を作り、その力で城を空に浮かべたという。

 

ポム爺さんの話を聞き、パズーは目を輝かせた。亡くなった父が語っていた話はウソではなく、ラピュタが本当に存在するとわかったからだ。あらためてパズーは、ラピュタ探索への意欲を燃やすことになる。ポム爺さんは、パズーとシータを坑道の出口まで案内した。

 

【ストーリーの流れ③(ネタバレ注意)】──囚われの身

坑道の外に出て空を見上げると、大きな雲が空全体を覆っていた。その雲を見て、パズーは「この空のどこかにラピュタがある」と、心をときめかせる。そんなパズーを見て、シータは一つの告白をする。シータの生家には、代々受け継がれてきた不思議な名前があるという。飛行石を受け継いだとき、シータもその名前を一緒に受け継いだという。シータは自分の本当の名の一部に「ラピュタ」が含まれているといい、パズーを驚愕させた。

 

パズーとシータの行動を読んでいたかのように、ムスカ率いる軍隊と特務機関が2人を急襲、パズーは後頭部を殴られて気絶し、シータともども囚われの身となる。2人は軍の要塞に連行された。

目覚めたパズーは、自分が石牢に閉じ込められていることを知る。脱出を試みるパズー。ここでもまた、死者が出ても不思議ではない描写が。パズーは石造りの垂直内壁を登り始め、おそらく10mくらい登ったところで滑り落ちて後頭部を激しく強打、並の人間なら即死していてもおかしくないというか即死しているはずだが、生き残っている。

 

一方、シータも囚われの身となっていた。ゲストとしてそれなりに厚遇されていたが、軟禁状態に置かれていた。ムスカは、シータを要塞の地下に連れ出す。シータが地下室で目にしたのは、横たわる巨大な1体のロボットだった。ムスカによれば、このロボットはラピュタから落下してきた戦闘用ロボットで、どのような材質で作られているのか、それすらも自分たちの科学力では判定できないという。

シータは、ムスカからラピュタについて説明を受ける。ラピュタは大昔に滅びた国家で、人々の記憶からその存在は忘れ去られているが、存在当時は、高度な科学力によって天空から全土を支配した強力無比な帝国だったという。恐ろしいことに、そのラピュタは今も空のどこかに浮かんでいるとのことだった。

 

ムスカは、さらに話を続ける。飛行石はラピュタを支配していた王族の末裔が、いつかラピュタへ帰還するために必要な道具で、一族によって代々受け継がれてきたものだった。つまり、シータはラピュタ王の末裔だったのである。ムスカはあくまでも紳士的な態度を崩さず、子どもをあやすように、「ラピュタが隣国の手に渡れば、世界の安全保障上の一大事になる」とのもっともらしい理屈を披露し、パズーの身の安全と引き換えに、飛行石を働かせる方法を教える、あるいは思い出すよう要求した。パズーを守りたい一心のシータは、ムスカの圧力に屈する。

 

パズーは牢屋から解放され、シータとの再会を果たす。ところがシータはムスカの思惑どおり、ラピュタの探索を断念するようパズーを促し、パズーの前から立ち去る。ムスカは、「シータさんは軍に協力してくれることになった」と告げ、パズーに金貨を数枚手渡し、「ラピュタ探索をあきらめるよう」暗に促す。シータに裏切られたと思い込んだパズーは意気消沈し、失意とともに要塞を去る。その後ろ姿を、シータは涙ながらに見送った。

 

【ストーリーの流れ④(ネタバレ注意)】──ロボット兵の脅威

パズーが去った夜、シータは祖父から教わった『困った時のおまじない』を何とはなしに呟く。実はそのおまじないこそ、ラピュタの封印を解く呪文だった。シータの呪文に反応し、要塞の地下に横たわっていたロボットが再起動、呪文の暗唱者であるラピュタの王族を探し出して護衛するため、動き始める。

 

要塞に駐留していた軍隊は慌てふためいて攻撃を試みるが、ロボットの身体は攻撃を寄せ付けなかった。騒ぎを聞きつけたムスカは、ロボットの姿を確認し、ラピュタへの封印が解けたと暗い笑みを浮かべる。ムスカのそばにいたシータを視認したロボットは、ジェットを噴射して飛び上がりシータに肉薄。恐怖を感じたシータはその場から逃げ出し、小さな塔の屋上まで駆け上がった。外に出た瞬間、シータが身に着けていた飛行石は眩い光線を発し、空の一点を指し示した。

 

一方、要塞から帰宅したパズーは、勝手に自宅に上がり込んでいたドーラ一家に捕らえられてしまう。シータに裏切られたと思い込んでいたパズーは、ドーラの指摘により、シータの行動はすべて自分(パズー)を守るためのものだったと気づき、飛行石を奪うために要塞へ向かおうとしていたドーラに帯同を願い出る。ドーラは同行を許し、フラップターでパズー宅を出立した。

要塞敷地内の小さな塔に駆け上がったものの、シータは行き場を失い、追い詰められてしまう。そこへロボットが登場、シータに対して臣下の礼をとると、シータが身に着けていたペンダントから光が放たれ、ロボット胸部のエンブレムを照射。指令を受け取ったロボットは、王族の末裔であるシータを護ろうとするかのように手を伸ばすが、その刹那、要塞内の大砲が火を噴き、信管が抜かれた砲弾がロボットの胸を直撃し、ロボットは機能を停止した。その爆風でシータは壁に吹き飛ばされて気絶、飛行石も飛ばされてシータの身体から離れ、塔外へ落下した。

 

ロボットを撃破したと思い込んだ要塞の兵士たちは、歓声を上げながら塔にのぼり、気絶しているシータを起こそうと、そのおさげ髪を引っ張る。シータが小さく呻くと、突如としてロボットが起動し、頭部のビームを撃ちまくる。慌てて逃げ出す兵士たち。

 

気絶したシータを腕に抱いたロボットは、持ち得る武器をすべて使用して、周囲の破壊に乗り出す。頭部のビーム砲で要塞の砲門をすべて破壊しつくすなどして要塞を無力化、ひたすら暴れまわる。その破壊力はすさまじく、要塞内の兵士が全滅してもおかしくないような暴れっぷりだったが、幸いにも死者の描写はない。

 

フラップターを飛ばして要塞近くにたどり着いたドーラ一家は、要塞全体が激しく燃え上がっている光景を目撃。上空で待機していた巨大戦艦ゴリアテの大砲が真下の要塞に向けられるのを見てとったドーラは危険を感じて引き返そうとするが、フラップターに相乗りしていた視力抜群のパズーが、小さな塔の上にシータの姿を見い出した。それを聞き、ドーラは、燃え盛る要塞の中にフラップターで突っ込んでいった。

ゴリアテの砲弾が直撃し、瀕死の状態に陥りながらも、それでもまだロボットは、王族であるシータに臣下の礼をとろうとしていた。その姿に、シータは心を打たれる。上空のゴリアテからの砲弾が複数着弾し、要塞内は大混乱に陥る、その間隙を縫うように、ドーラとパズーはシータの救出に成功し、要塞を後にした。シャルルら息子たちが煙幕を張って軍の追跡を阻害し、ドーラ一家はまんまと逃げおおせることに成功した。ロボットは完全に破壊され、沈黙する。

 

騒ぎが収まった後、塔の下に落下したシータの飛行石をムスカが拾い上げると、飛行石から薄い光線が放たれ、空の一点を指し示した。ムスカはその光線がラピュタの位置を示していると確信し、予定どおりラピュタに向けて出発すると、モウロ将軍に伝えた。

 

【ストーリーの流れ⑤(ネタバレ注意)】──タイガーモス号

飛行石をムスカに奪われたパズーとシータは、ドーラに頼み込んで、海賊の仲間入りをさせてもらう。目的は、もちろん飛行石の奪還とラピュタ探索だ。ラピュタに向けて戦艦ゴリアテで先に出発したムスカを、ドーラ一家は持ち船のタイガーモス号で追跡する。シータは、飛行石が指し示した方角をしっかり記憶しており、話を聞いたドーラはその方角へ船首を向けた。

木のジグソー 天空の城ラピュタ 208ピース タイガーモス 208-W207

木のジグソー 天空の城ラピュタ 208ピース タイガーモス 208-W207

  • 発売日: 2013/08/10
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

海賊の仲間入りを果たしたパズーとシータは、それぞれ仕事が与えられる。もともと機械工の見習いだったパズーは、その知識と経験を生かして、タイガーモス号のエンジン整備や船体補修を、シータは食事担当としてキッチンを任される。

 

慌ただしい1日が過ぎたその日の夜、パズーは交代要員として、船体上部の見張り台に立つ。しばし周囲を警戒していると、驚いたことに、こっそり起き出したシータが、船体外部に取り付けられた足場を登って、見張り台にやって来た。

 

上空何mを飛んでいるか不明だが、気温は相当に低いはずだし、おまけに猛スピードで飛んでいるわけだから、すさまじい風速にさらされているはずで、見張り台に立つ人間の体感温度は氷点下と思われる。そんな極寒の場所へ、シータは半そで姿でやって来た。しばし会話を愉しむ2人。考えてみれば、パズー宅で会話して以来、2人にゆっくりとした時間を過ごす余裕はなかった。

 

シータは、祖母から多くのおまじないを教わったといい、その中には、絶対に使ってはいけない『滅びの言葉』なるおまじないも含まれていたと打ち明ける。2人のほほえましい会話は、伝声管を通じて、ドーラらには筒抜けだった。

 

そのときだった。パズーは、タイガーモス号の真下の雲に、巨大な船影が浮かび上がってくるのを見い出した──。

 

【ストーリーの流れ⑥(ネタバレ注意)】──嵐の中へ

パズーの絶叫を耳にし、ベッドから飛び起きたドーラは、眼下にゴリアテの船影を認め、操舵室に退避を指示。雲から姿を現したゴリアテもタイガーモス号を発見し、激しい砲撃を加えてきた。タイガーモス号は、雲の中にその身を隠した。

 

ドーラは、ゴリアテと遭遇したことにより、タイガーモスの飛行コースが想定から大きく外れていたことを知る。タイガーモス号より足が速いゴリアテに振り切られる可能性に焦ったドーラは伝声管でパズーに連絡をとり、見張り台を切り離して凧(グライダー)にし、母船のはるか上空から、ゴリアテの飛行ルートを偵察するよう指示を出した。

 

準備を済ませ、パズーが見張り台を切り離すと、パズーとシータを乗せた見張り台は勢いよく上昇し、雲の上へ出た。タイガーモス号とグライダーは、1本の伝声管を通してつながっているのみである。その伝声管から、ドーラがしきりに連絡を寄越す。

 

夜が明け始めた。シータは、太陽が東手から昇ろうとしていることに気づき、「おかしい」とパズーに伝える。タイガーモス号は、東へ向かって進んでいるはずだったのだ(本当なら、真正面から太陽が昇るはず)。風に流されて進路が狂ったことを知ったドーラは、態勢の立て直しを図ろうとする。

 

そのとき、シータは見た。とてつもなく巨大な入道雲がタイガーモス号に近づいてくるのを。いや、タイガーモス号が巨大な入道雲に引き寄せられていたのだ。操舵室から上空を見上げたドーラは、その雲が船乗りから『竜の巣』と呼ばれ畏れられている巨大低気圧だと知り、退避を命じた。しかし、タイガーモス号は操舵不能に陥り、どんどん竜の巣に近づいていく。

 

巨大な入道雲が『竜の巣』であることを知ったパズーは、亡くなった父が語っていた話を思い出す。父は、偶然入り込んだ『竜の巣』の中でラピュタを見たのだ。父が語っていたように、『竜の巣』は通常の低気圧とは風向きが逆になっていた。そのため侵入を試みる者は、立ちはだかる風の壁に跳ね返されるか粉砕されてしまうのだ。おそらくは、ラピュタ人以外の人間がラピュタに近づくことを拒むために人工的に作られた(発生させられた)低気圧だと考えられる。

 

パズーはその話をドーラに伝え、「『竜の巣』へ行こう」と促す。そのとき、ゴリアテがタイガーモス号のそばまで迫っていた。ゴリアテは激しい砲撃を開始し、その衝撃で、タイガーモス号とグライダーは切り離されてしまう。砲弾を数発喰らったタイガーモス号は半壊し、『竜の巣』にのみ込まれてしまう。パズーはグライダーを『竜の巣』に向け、その内部へ。ムスカやモウロ将軍らを乗せたゴリアテも、ラピュタが潜んでいると思われる『竜の巣』の中心部を目指した。

 

【ストーリーの流れ⑦(ネタバレ注意)】──天空の城

パズーとシータを乗せたグライダーは、雷光の中を彷徨う。そのときパズーは、父が操舵する飛行船の幻影を視る。父は、まるでパズーをどこかへ案内しようとしている様子だった。父の飛行船に導かれるようにグライダーを進めていたパズーは、いつの間にか気を失ってしまう。

 

2人を乗せたグライダーは雲を突き抜けると、低気圧の中心にたどり着く。そして、ふわりと地面に降り立った。そこは、パズーが憧れ続けたラピュタだった。

目を覚ましたパズーとシータは、自分たちがラピュタにたどり着いたことを知り、抱き合って大喜びする。そこは、争いとは無縁の、緑豊かで静謐な空間だった。やって来た園丁ロボットに城内を案内されたパズーとシータは、穏やかな庭園や水底に沈んだ街の風景などを目にし、ムスカが『全地上を支配した恐怖の帝国』と表現したラピュタの別の顔を垣間見ることになった。

23ピース クムクムパズル 天空の城ラピュタ 園丁ロボット

23ピース クムクムパズル 天空の城ラピュタ 園丁ロボット

  • 発売日: 2016/09/17
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

話は逸れるが、そもそもラピュタは海抜何mくらいの高度に浮かんでいるのだろうか。映像で見るかぎり、かなりの高所と思われる。したがってパズーとシータは低酸素による高山病、あるいは低体温症で死亡しても全く不思議ではないことに言及しておいて、話を先に進めたいと思う。

 

園丁ロボットは、まるでパズーとシータを案内でもするかのように墓所へ。巨大な墓の傍らには、はるか昔に壊れたロボットが墓を守るように立っていた。

 

【ストーリーの流れ⑧(ネタバレ注意)】──ラピュタの『雷』

巨大な爆発音を耳にしたパズーとシータは、音がした方向へ走り出す。眼下を見下ろすと、ラピュタの下層部にゴリアテが到着しており、上陸した兵隊らが街の中で略奪の限りを尽くしていた。

 

その光景を目撃したパズーの脳裏に、ひとつの疑問がよぎる。なぜ、彼らは上陸できたのかと。周囲を見渡すと『竜の巣』は消滅し、ラピュタは全貌を露わにしていた。雲が晴れたからこそゴリアテは上陸できたに違いないと考えたパズーは、シータが唱えた呪文によってラピュタはすでに眠りから覚めており、石を持つ王の帰りを待っているのではないかという仮説を立てた。パズーとシータは、ムスカラピュタ王として君臨する前に、飛行石を取り戻そうと決意する。

 

ゴリアテのそばに、壊れたタイガーモス号と、捕まって縛り上げられたドーラ一家の姿を発見したパズーとシータは、彼らの救出に向かう。パズーは下から回り込んで外壁をよじ登りドーラを縛り上げていた縄を切ることに成功するが、その代償として、ムスカら特務機関の男たちにシータが捕えられてしまう。パズーの目の前で、シータはムスカらとともにラピュタ下部の黒い半球体の中に消えた。

ムスカはシータを連れて、ラピュタの中枢部に向かう。途中、『この先は王族しか入れない』と伝え、特務機関の2人の男性を半球体内部に置き去りにすると、ムスカとシータはさらに奥へと入っていった。ちなみに、この特務機関の男性2人がこの場所から脱出できた描写はないため(死亡した描写もないが、死んでいるに決まっている)、死者としてカウントしておきたい

 

ムスカとシータは、ラピュタの深層部にたどり着くが、入り込んでいた木の根が2人の前進を阻むかのように、あちこちに絡み付いていた。ラピュタの最奥部にある部屋に辿り着いたムスカとシータは、宙に浮いた光輝く巨大な飛行石を目にした。

 

すぐ近くに石造の文字盤が建てられており、メモを片手に解読を試みたムスカは、「読める」と興奮する。その異様な様子を訝るシータに対し、ムスカは自らもラピュタ王家の末裔だと告げ、本当の名を名乗った。ここに来て、ムスカの狙いが明らかになる。ムスカは、ラピュタの力を手に入れて世界を支配することを企図していたのだ。

 

その頃、ゴリアテでは騒ぎが起こっていた。本国にラピュタ発見の報を入れられると後々やっかいになるとの考えから、ムスカは特務機関の部下に命じ、ゴリアテの無線機をすべて破壊させていた。それに気づいたモウロ将軍は、ムスカらを反逆者と断定し、兵を集結させて捜索に乗り出す。

 

目撃報告から、ムスカラピュタ下部の黒い半球体にいると踏んだモウロ将軍は、爆薬を仕掛けて突破口を開こうとするも、黒い半球体はびくともしなかった。そのとき、辺り一帯にムスカの声が響き渡る。ムスカは、石板を操作して、モウロ将軍のために入り口を出現させ、内部へ誘う。

 

ためらいつつも、勢いで中に踏み込むモウロ将軍と配下の兵たち。通されたのは、半球体の最下部にあるガラス張りの展望室のような部屋だった。そこへ、ホログラムのムスカとシータが現れる。そのころパズーも、どうにかして半球体の中に入り込もうと奮闘していた。木の根を伝って半球体の外壁沿いに入り口を探していたところ、突じょ最下部に展望台のような部屋が現れ、そこに兵たちが流れ込むとともに、ムスカとシータが姿を現したことに、パズーは驚いた。

 

ムスカは自らをラピュタ王と名乗り、ラピュタの恐るべき科学力をモウロ将軍らに披露する。石板に触れ、文字をなぞると、球体の底部から7基の柱が現れ、そこから巨大な光弾が発射された。直下の海を直撃した光弾は、すさまじい大爆発を引き起こした。その圧倒的な科学力と攻撃力に、モウロ将軍は蒼白となる。

 

再びムスカが石板をなぞると、モウロ将軍らが立つ部屋の床面が開き、モウロ将軍と兵士たちは、数千メートル下(と思われる)海面に放り出された。もちろん、全員死亡である。さて、いったい何人が死んだのか。

 

カウントを試みたところ、海面に落下した兵士は60名程度と思われる。もしかすると、もっと多いかもしれないし少ないかもしれないが、大きな差はないはずだ。明確でなくてもうしわけないが、ここでは60名を死者としてカウントしておく。

 

【ストーリーの流れ(ネタバレ注意)】──滅びの言葉

その後もムスカは、ラピュタの科学力を存分に見せつける。ラピュタ内で眠っていた戦闘用ロボットを再起動し、ゴリアテに総攻撃をかける。ロボットの攻撃力は圧倒的で、またたくまにゴリアテを撃破、ゴリアテは海面に落下する。乗組員は全員死亡だ。

 

公式設定によると、ゴリアテの乗員数は360名らしい。モウロ将軍を含め、先に60名が死亡していることから、ここでは残る300名を死者としてカウントしておきたい。

 

ゴリアテから人が落下していく様を目撃したシータは、これ以上の惨劇を食い止めるため、ムスカから飛行石を奪還し、その場から逃走を図る。飛行石を失ったムスカラピュタをコントロールする力を失う。ムスカは、冷笑を浮かべながらシータを追いかける。

 

その頃、パズーは、ラピュタ下部の黒い半球体の内部に入り込むことに成功していた。ムスカから逃げるシータの耳に、パズーの声が届く。木の隙間の向こう側にパズーの姿を見い出したシータは、手を思いっきり伸ばして木の向こう側にいるパズーに飛行石を渡す。シータは、「海に捨てて」と懇願した。そこへムスカが追いつき、木の隙間からパズー目がけて拳銃を発射。幸いにも、弾丸はゴーグルを破壊しただけで、パズーにケガはなかった。

 

シータは再び駆け出す。ムスカはパズーに「娘の命と引き換えだ。石を大事に持っておけ」と言い放ち、シータを追う。そして、シータを玉座の間に追い詰めた。そこへ、大砲を構えたパズーが到着し、「石は隠した。シータと2人で話をさせろ」とムスカに要求する。ムスカは、「3分間だけだ」と言って、2人から距離を取る。

 

シータのそばに駆け寄ったパズーは、シータの耳元で、ドーラらの縄を切って自由にしたことを伝え、『滅びの言葉』を教えてくれと頼んだ。パズーの手には、「隠した」はずの飛行石が握られていた。ムスカが「3分経った」と伝えると、パズーは大砲を投げ捨てる。訝るムスカが見つめる中で、パズーは飛行石を握った手をシータの手と重ね合わせて前に突き出すと、2人同時に『バルス!』と叫んだ。

 

初見時、『滅びの言葉』がたった一言であることに驚いた記憶がある。万一、寝言などで無意識的に呟いてしまったら、取り返しのつかない大惨事になるのに、と心配になったのだ──。もしかすると、ラピュタを蘇らせた後でないと、『滅びの言葉』は効力を発揮しないのかもしれないなーと、自分で自分を納得させたことを覚えている。

 

【ストーリーの流れ⑩(ネタバレ注意)】──大崩壊

閑話休題

『滅びの言葉』を唱えると、パズーとシータが手にした飛行石から、凄まじい衝撃と青白い閃光が放たれ、パズーとシータは後方の木の根に向かって弾き飛ばされる。閃光を直視してしまったムスカは失明状態に陥り、辺りをフラフラと彷徨う。

 

ラピュタ中枢部で浮いていた巨大飛行石は上昇を始め、半球体内部のコンピュータ回路を自壊させる。ラピュタは中枢部が完全に崩壊し、ムスカが再起動させた戦闘用ロボットも機能を停止。ムスカは、無数の戦闘用ロボットと、ラピュタ半球体の瓦礫とともに落下し、海の藻屑となる

 

ラピュタは科学の粋を集めた中枢部を失うものの、巨木に支えられた上層部の宮殿は健在で、巨大飛行石の力で力強く浮遊していた。しかし半球体を失って重量が軽くなったことで、少しずつ少しずつ上昇していった。

 

その様子を、大混乱の中を脱出に成功し、フラップターに乗って宙を漂っていたドーラ一家が見上げていた。絡まり合った木の根の隙間に巨大飛行石の青い煌めきを確認したドーラは、飛行石を手に入れるべくフラップターで上昇を試みるが、タイガーモス号の全乗組員が乗っていたことによる重量過多で、フラップターは上昇力を得られず、その場に停滞する。

 

一方、吹き飛ばされたパズーとシータの身体は、木の根に支えられており、大崩壊による海面落下(=死)を免れていた。意識を取り戻した2人は木の根を伝い、同じように木の根に捉えられていたグライダーを発見、軽く補修を施し、空に向かって飛び出した。

 

2人を乗せたグライダーは、スピードを上げながらラピュタをどんどん離れていく。上層部の宮殿で、歩行する園丁ロボットの姿を認める2人。二度と目にすることがないであろうラピュタの威容をその目にしっかりと焼き付けておくため、2人は上昇を続けるラピュタをいつまでもいつまでも、そしていつまでも見つめていた。

 

飛行石を諦めきれないドーラたちがなんとかして上昇しようともがいていたところ、上空から下降してくるグライダーを目にする。そこにはパズーとシータが乗っていた。奇跡的な再会に、誰彼構わず大はしゃぎする。

 

ドーラはシータをきつく抱きしめると、シータの顔に硬いものが当たった。それは、脱出のどさくさにまぎれてラピュタから盗んできた宝石だった。胸から取り出した宝石を手に、ドーラは「たったこれだけさ」と豪快に笑う。ドーラの息子たちも、盗んできた宝石を派手に見せびらかす。大声で笑い合うパズーとシータ、そしてドーラ率いる海賊たち。

 

別れのときがやって来た。パズーとシータは、グライダーでドーラのもとから離れて帰途につく。いつしか固い友情で結ばれていたパズーたちとドーラ一家は、別れを惜しんで、お互いにいつまでも手を振り続けるのだった。

 

そして、エンドクレジット。余韻がいつまでもいつまでも残る(初見から数十年が経った今でもまだ残っている)秀逸なエンディングだ。

 

 

この作品の死者数をまとめると以下になる。

見方は、死者──殺人者/死因 である。

 

【確定死者数】

パズーの父──世間の人々/詐欺師扱いされて

パズーの母(遺影で登場)──不明/不明

特務機関員2名──ムスカラピュタ下部の黒い半球体内に取り残される

モウロ将軍──ムスカ/墜落死

ラピュタ下部の半球体に足を踏み入れた兵士60名(推定)──ムスカ/海に墜落死

戦艦ゴリアテ乗組員300名──ムスカ/ロボット兵の攻撃を受け、海に墜落死

ムスカ・パロ・ウル・ラピュタムスカ)──パズーとシータ/黒い構造体に挟まれたか、あるいは、海に墜落死

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【計366名】

 

この記念碑的名作を成立させるために、今日も多くの人が殺された。

天空の城ラピュタ [DVD]

天空の城ラピュタ [DVD]

  • 発売日: 2014/07/16
  • メディア: DVD
 
天空の城ラピュタ [DVD]

天空の城ラピュタ [DVD]

  • 発売日: 2002/10/04
  • メディア: DVD
 
天空の城ラピュタ サウンドトラック ~飛行石の謎~

天空の城ラピュタ サウンドトラック ~飛行石の謎~

  • 発売日: 2014/06/27
  • メディア: MP3 ダウンロード